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市民地質学者が地球に関連した話題を中心として様々な話題を提供するブログです.
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 この物語のキーワードは,「就活」と「Twitter」.

  就活によって失われるアイデンティティーを守ったり,新たなアイデンティティーを構築しようという若者達の葛藤の物語である.それにしても,就活の若者の精神に与える打撃は大きい.企業の就職担当者や学生を送り出す大学の教員や就職担当者こそよむ小説だと思う.

  TwitterなどのSNSでは,本音と建て前を使い分けることは常識かもしれない.主人公は複数のアカウントをもっていて,陰のアカウントで本音を語りながら精神のバランスを取っている.友人が、メールアドレスから陰のアカウントを見つけ出して,主人公の「本性」を暴いていく.いや,暴いていると思っている.この部分は,結構スリリングである.

 アイデンティティーを確保するためには,「完全で無くても,評価されなくてもまずは実施し,それを続けることが大切」というのが,この小説の重要なメッセージだと思う.

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この作品はkindleで無料で読むことができる.映画は,私の世代は結構見ていると思う.「どっっど どっどど どっどど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ」という,歌は今でも記憶の底に残っている.田舎の小さな小屋みたいな公民館で見た映画.同級生が何かというと口ずさんでいたのが思い出せる.
 田舎の小学校に鉱山技師の子供の又三郎が転校してきて,地元の子供達と田舎の自然の中で生活する話.この物語の舞台は,昔はいろいろなところにあった風景で,多くの日本人の原風景である.この物語が,都会育ちで,こんな風景の中に育ったのでもない人々や若い人々の共感を得ることができるのは,ここで展開されている風景は,多くの日本人のふるさとへの「共同幻想」なのかもしれない.日本の自然とそこにすんでいる日本人との関係から生まれてきたもので,日本独特のものと思う.
 福島第一原発震災によって,ここで言う意味での「ふるさと」が失われたことは,日本人が心の底で大切にしていたものを崩壊させてしまったという点で,重大な出来事であった.日本人,日本文化のあり方と合わせて,真剣に感じ,考えなければならないと思う.

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 通勤時間などに,Kindle本をiPadやiPhoneで読んでいる.昨日はグスコーブドリの伝記.
 
 「クーボー大博士」が小型の飛行船で,イーハトーブ上空を飛び回っている所なんか,宮崎駿風,あるいはスチームパンク的でなかなか良い.それにしても「ブドリ」,「クーボー大博士」,「ペンネン老技師」,「ネリ」・・・.この不思議なネーミング.これが宮沢賢治作品の大きな魅力である.

 
 それにしても,この物語は悲しい物語だ.ブドリの生い立ち,最期も悲しい.ブドリの最期は,実に簡単に書いてある.『すっかりしたくができると,ブドリはみんなを船で帰らせてしまって,じぶんは一人島に残りました. そしてその次の日,イーハトーブの人たちは,青ぞらが緑いろに濁り,日や月が銅いろになったのを見ました.』.これだけです.ネリが生き延びていて,幸せな生活を送っていたというのが救いかな・・・.
 
 この物語を読みながら,前に紹介した「イチエフ」の方々を思い浮かべた.頑張ってほしい.

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小出裕章・渡辺満久・明石昇二郎, 2012, 「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場.集英社,189pp.
 
 原発に比較して,あまり議論の表面には出てこない放射性廃棄物の再処理工場の安全性について警鐘をならしている本である.もし,福島第一原発と似た災害が六ヶ所村再処理工場が受けた場合,どんな被害が発生するかをシミュレーションしている.想像を絶するような被害が出るという.
 
 著者は,3名それぞれが,原子炉の専門家,活断層の専門家,ルポライターである.それぞれの立場から現状を分析している.分析結果の妥当性については,元になったデータや学術論文等に当たらないとにわかには評価できないが,最悪のシナリオを描けばこんな風になりそうだという想像はできる.専門家による検証が必要である.
 
 原発の安全性に関連して,活断層の評価について原子力規制委員会で検討がなされており,活断層に対する国民の関心は高い.本書の第三章では,六ヶ所再処理工場の直近に活断層が存在しており,その再評価が緊急かつ重要な課題として指摘されている.この指摘を真摯に受け止め,その活動度について専門家による徹底的な検討が必要と考える.
 
 原発推進の是非にかかわらず,使用済み核燃料の問題は必ず解決しなければならない問題である.避ける訳にはいかない.これは地質学者を初め,関連する研究者,技術者,政策決定者などは肝に銘じなければならない問題であることは確かであり,覚悟を決めて対応しなければならない.

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布施祐仁, 2012, ルポ イチエフ-福島第一原発レベル7の現場.岩波書店, 196pp.

 「イチエフ」は福島第一原発の意味.福島第一原発の事故収束の最前線からのルポルタージュである.主として,第一線作業員への直接インタビューを元に構成されており,生々しい現実が伝わってくる.問題の性質上,ほとんどが匿名である.

 事故当時,福島第一原発では約6400人が勤務していた.これを見ただけでも原発が巨大なシステムであることが分かる.このシステムが3.11の震災でいきなり崩壊し,とんでもない事態が発生して大変な混乱が起こっていたことが記述されている.混乱からくる問題が作業員に集中している.その,原因が重層下請け構造にあるという.

 先日,新聞等に作業員に支払われるべき危険手当がピンハネされているとの記事がでていた.本書では,その状況がかなり詳しく述べられている.東京電力の元請けの下には,なんと7次請まで存在し,その内の3次請までは登録業者でそれ以下は非登録業者であるという.下位のランクに矛盾が集中してくることになる.この構造の中でさまざまなピンハネが発生している.特に,危険手当のピンハネは確かに発生していたようである.一方,事故発生直後,数十万円の日当が提示されたとのニュースが流れていたが,そのような事実は無かったとのことである.どうしてこのようなニュースが流されたのか不思議である.我々はマスコミでの報道にも冷静に対応しなければならないことを示す一例であろう.

 本書の最後に,東京での原発廃止デモに対して原発作業員の中には違和感を持っている人の存在が報告されている.原発問題を考える際,この気持ちを理解することも重要であると強く感じた.

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プロフィール
HN:
天野一男
性別:
男性
自己紹介:
☆茨城大学名誉教授
☆東京大学空間情報科学研究センター・客員研究員
☆日本大学文理学部自然科学研究所・上席研究員
☆一般社団法人日本地質学会理事,ジオパーク支援委員会・委員長, 
 技術者教育委員会・委員長
☆茨城県北ジオパーク推進協議会顧問
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