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小出裕章・渡辺満久・明石昇二郎, 2012, 「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場.集英社,189pp.
 
 原発に比較して,あまり議論の表面には出てこない放射性廃棄物の再処理工場の安全性について警鐘をならしている本である.もし,福島第一原発と似た災害が六ヶ所村再処理工場が受けた場合,どんな被害が発生するかをシミュレーションしている.想像を絶するような被害が出るという.
 
 著者は,3名それぞれが,原子炉の専門家,活断層の専門家,ルポライターである.それぞれの立場から現状を分析している.分析結果の妥当性については,元になったデータや学術論文等に当たらないとにわかには評価できないが,最悪のシナリオを描けばこんな風になりそうだという想像はできる.専門家による検証が必要である.
 
 原発の安全性に関連して,活断層の評価について原子力規制委員会で検討がなされており,活断層に対する国民の関心は高い.本書の第三章では,六ヶ所再処理工場の直近に活断層が存在しており,その再評価が緊急かつ重要な課題として指摘されている.この指摘を真摯に受け止め,その活動度について専門家による徹底的な検討が必要と考える.
 
 原発推進の是非にかかわらず,使用済み核燃料の問題は必ず解決しなければならない問題である.避ける訳にはいかない.これは地質学者を初め,関連する研究者,技術者,政策決定者などは肝に銘じなければならない問題であることは確かであり,覚悟を決めて対応しなければならない.

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布施祐仁, 2012, ルポ イチエフ-福島第一原発レベル7の現場.岩波書店, 196pp.

 「イチエフ」は福島第一原発の意味.福島第一原発の事故収束の最前線からのルポルタージュである.主として,第一線作業員への直接インタビューを元に構成されており,生々しい現実が伝わってくる.問題の性質上,ほとんどが匿名である.

 事故当時,福島第一原発では約6400人が勤務していた.これを見ただけでも原発が巨大なシステムであることが分かる.このシステムが3.11の震災でいきなり崩壊し,とんでもない事態が発生して大変な混乱が起こっていたことが記述されている.混乱からくる問題が作業員に集中している.その,原因が重層下請け構造にあるという.

 先日,新聞等に作業員に支払われるべき危険手当がピンハネされているとの記事がでていた.本書では,その状況がかなり詳しく述べられている.東京電力の元請けの下には,なんと7次請まで存在し,その内の3次請までは登録業者でそれ以下は非登録業者であるという.下位のランクに矛盾が集中してくることになる.この構造の中でさまざまなピンハネが発生している.特に,危険手当のピンハネは確かに発生していたようである.一方,事故発生直後,数十万円の日当が提示されたとのニュースが流れていたが,そのような事実は無かったとのことである.どうしてこのようなニュースが流されたのか不思議である.我々はマスコミでの報道にも冷静に対応しなければならないことを示す一例であろう.

 本書の最後に,東京での原発廃止デモに対して原発作業員の中には違和感を持っている人の存在が報告されている.原発問題を考える際,この気持ちを理解することも重要であると強く感じた.

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昨日の、茨城県北ジオパーク・インタープリター養成講座の総合討論の場で、ジオパークにおける活断層の取扱い方について質問がでた。
ジオパークを自然災害を学ぶ場にしようという、最近の動きからすると活断層についてもいずれ取り扱わざるを得ないかもしれない。

しかし、活断層は原発の立地、再開などとも関連して極めてセンシティーブなテーマである。
原子力規制委員会においても委員により異なった判断がなされていることも報道されている。
学術的に明確な結論がでるまでは、活断層についてはジオパークでは言及すべきでは無いというのが、現時点での私の結論である。
昨日質問された方にもそのように答えた。

ただ、活断層について、その定義、認定基準、解析方法、活動予測などについて、一般市民に理解できる形では知らされていないのが現状ではないだろうか。
専門家は、現時点で確実に言えること、解析の限界などについて市民に対する一層の解説を行う義務があると思う。

全国的な規模で、活断層の調査が展開されることも重要であるが、地域ごとの詳細な調査も不可欠である。
そのためには、地方大学、地方の博物官、調査研究機関に所属する専門家による地域地質の徹底的な調査が有効となるものと思う。
地方にある専門家の意識の向上と、それなりの予算措置も必要であろう。

その地域の地質(大地の体質)ならば何でもしっている『家庭医』的専門家の必要性を強く感じている。

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落合恵子,2012,てんつく怒髪-3.11,それからの日々.岩波書店,172pp.

  3.11の東日本大震災以来,膨大な情報が発信されている.中でも,マスコミを通じての情報量は極めて多い.一般市民が震災について情報を得るのは,新聞,雑誌,書籍である.ここでは,一般書店で入手できる東日本大震災・原発震災についての出版物を中心に紹介し,マスコミを通じての意見分布を探ってみたい.

   第一弾.3.11以来の著者のブログ,信濃毎日新聞の記事をまとめたものである.表題の通り,原発震災に対する政府や電力会社の対応への怒りを表した本である.今までの原子力行政への不信感が出発点で,再稼働NO,原発NOを主張している.関係した政治家・技術者は,この怒りを虚心坦懐に受け止めなければならないだろう.専門家の倫理が問われている.

   「原子力ムラ」に象徴される「原発的体質」(癒着,隠ぺい,欺まん,民意への裏切り等)を問い続けたいと主張している.今こそ,政治家を含む専門家はこれにどう応えるかが問われている.

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先日、卒業生の一人が来室した。
今、放射性廃棄物の処理についての仕事をしているとのこと。
極めて重要な仕事なので、おおいに頑張ってほしいと話した。
日本の将来を左右するような仕事かもしれない。
卒業生が、このように重要な場面で活躍していることを誇りに思う。

ところで、その折にeBookの話がでた。
私自身eBookの編集に関わっていながら、eBookそのものを購入したことがなかった。
コンテンツが貧弱だというのが第一の理由。
しかし、彼と一緒に検索してみるとそれなりの内容の本も出版されていることが分かった。
何冊かためしの購入してみた。

その中の一冊。
「大洪水時代」。
手塚治虫の漫画で、昭和30年のおもしろブック8月号の付録である。
子供のころ、何度も読み直してぼろぼろになっていた。
今回読み直してみたが、かなり正確に内容を覚えていたのには自分ながらびっくりしている。

日本政府が秘密裏に北極海に建設していた原子力要塞が大爆発を起こしたために大津波が発生し、日本列島が沈没してしまうという話である。
今読むと、なんとも身につまされる話ではないか!

最後のページ・・・
「人類はまだまだほろびはしないでしょう・・・」
印象的である。

3.11のような事態は想像できなかった訳では無いのだと思う。
さまざまな理由から、想像力をあえて押さえつけてしまっていたのかもしれない。
漫画を読みながらこんなことを考えた。

あわせて「渚にて-人類最後の日-」(ネビル・シュート)も読んでいるが、こちらはやるせないな。

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プロフィール
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天野一男
性別:
男性
自己紹介:
☆茨城大学名誉教授
☆東京大学空間情報科学研究センター・客員研究員
☆日本大学文理学部自然科学研究所・上席研究員
☆一般社団法人日本地質学会理事,ジオパーク支援委員会・委員長, 
 技術者教育委員会・委員長
☆茨城県北ジオパーク推進協議会顧問
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