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村上達也・神保哲生, 2013, 東海村・村長の「脱原発」論.集英社新書,217pp.(ISBN978-4-08-720702-6)

 

 村上元東海村村長による脱原発論である.これを読みながら20113.11の震災のことを思い出していた.福島第一原発のメルトダウン直後に,水戸から家族を関西に避難させた知り合いがいた.その時には少し大げさでは無いかと思った.

 ところが,この本を読むと東海第二原発も「フクシマ」寸前だったと言う.それを免れたのは,単に偶然であったに過ぎなかった.もし,東海第二原発で「フクシマ」が起こっていれば,水戸は東海村から10数キロであるから,即避難しなければならなかった.即家族を避難させた知人は,正しい判断をしていたことになる.

 ところで,村上元村長が,この事実を知らされたのは半年後であったとのこと.これは恐ろしいことである.この本を読んでゾッとした.原発震災以降,市民の科学者・技術者や政治家に対する信頼度が落ちるのはこんな所からも原因がある.

 1999年のJOC臨界事故で,事故への対応について学んだはずであったのに,2011年にはそれがほとんど生かされなかったと指摘されている.

 原発震災といった深刻な問題ですら,時間と共に風化がはじまっている.

これからの日本の原発問題,エネルギー問題を考える上でも,必読の書である.

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増田寛也編著:地方消滅−東京一局集中が招く人工急減−.中公新書2282, 243pp.ISBN978-4-12-102282-0

  

 大学生協書籍部で新書・文庫ベストセラーになっていたのを見て購入した.衝撃的な表題にひかれたこともある.帯には「
896の市町村が消える前に何をなすべきか」とある.
 2010年の国勢調査による全国の人口分布を基準にして2090年までの人口の推移をシュミレーションし,その結果をもとに将来予測したものである.巻末に全国市町村別の状来推計人口の一覧が載せられているのが特徴である.ここには2040年における,各市町村の総人口と若年女性(2039歳)の推計値がのせられている.
 
日本全体としての推移の特徴は,総数は一定の割合で減少し,2040年には2010年の人口の45パーセントになる.一方,2040年までは65歳以上の人口は,131パーセントまで増加するが,その後減少を開始し,最終的に80パーセントになる.2040年以降は若年人口のみならず老年人口も減ることになる.本格的な人口減少開始の時期が2040年と指摘している.
 人口減少による地域の落ち込みを避けるためには,2040年までには何らかの手がうたれなければ,破滅への道を歩むことになるという衝撃的な指摘がなされている. 
 茨城県を見ると,県北地域を中心として深刻な状況になる.茨城県では,県北地域の振興が重要な課題であることは,多くの人々に認識され,様々な手が打たれはじめているが,必ずしも有効な手段が見つかっていないように思う.本書を読んで,今こそ真剣に考えなければならない時期であることを強く感じた.地域振興を考える人に一読をすすめる.

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 最近,昔読んだ本を再読するセンチメンタルジャー,ニー読書を時々する.年末に伊豆の温泉宿で,閑にまかせて芥川の「江南の扇」を読み直した.

 高校時代読んだものの中で,気持ちのどこかに引っかかったものの一つに「江南の扇」がある.断首された土匪の血をしみこませたビスケットを,その土匪のもと情婦に食べさせるというややグロテスクな内容の小説である.きめが,その情婦の同僚がもと情婦がビスケットを食べようとする時に,主人公の手を力を込めて握るというところ.

 高校時代,この部分に同意しつつもやや違和感を覚えた記憶が残っていて,気になっていた.芥川の小説の中では,「ひょっとこ」,「手巾」が同じ同じおちになっている.

 これは観念論だというのが,現在の自分の結論である.芥川の小説のいくつかが観念論的なことをかなり前から感じてきていた.歳をとると,芸術に対する感覚も変わってくる.今回,ウィキベディアで芥川が自殺する直前に秘書と心中未遂をしていることを知り,人間芥川を知ることができたような気がする.歳と共に,私自身の価値観も変わっているのだと思う一つの出来事であった.これからは,芥川はもう読まないと思う.

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レヴィ・ストロースの「悲しき熱帯」,3度目の読書.
一回目は大学1年生の時だったような気がするが,記憶が定かで無い.

下記のような過激な記述があった.
今までは読み飛ばしていたが,今回初めて気がついた.
1955年に出版された本に,こんなことが既に書いてあった!!!

『西洋文明の生んだ最も高名な作品ー窺い知ることのできない複雑さで,さまざまな構造が入念に組み合わされている原子炉ーの場合のように,西洋の秩序と調和は,今日地上を汚している夥しい量にのぼる呪われた副産物の排泄を必要とするものなのである.』
悲しき熱帯(上)川田順造訳p.51.

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茨城県の平磯海岸でひろった,穿孔貝による穴が沢山あいている砂岩である.
この穴に息を上手く吹き込んでやると音がでる.
私は,この種の岩石を見つけると,必ず吹いてみる.
吹く度に,古代人の石笛というのは,こんなものだったかもしれないと思っていた.

最近読んだ本に面白いことが書いてあった.
縄文時代の石笛には穴が2つしかなく,2つの音だけがでるのだそうだ.
そして,その音の間隔は4度になっている.
この4度の音程が,世界の民族音楽の音階の柱となっている.
マーラーの交響曲1番のモチーフがこの4度の音階だとのこと.
第一番のユニークさが,ここにあるという.
ところで,この交響曲の中では郭公も,4度の音程差で鳴いている.
ちなみに,ベートーベンの田園では,郭公は3度で鳴いている.

こんな話も,ジオサイトでの説明に加えられれば面白いかもしれない.
参考文献:柴田南雄(1984)グスタフ・マーラー.岩波新書,208pp.


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プロフィール
HN:
天野一男
性別:
男性
自己紹介:
☆茨城大学名誉教授
☆東京大学空間情報科学研究センター・客員研究員
☆日本大学文理学部自然科学研究所・上席研究員
☆一般社団法人日本地質学会理事,ジオパーク支援委員会・委員長, 
 技術者教育委員会・委員長
☆茨城県北ジオパーク推進協議会顧問
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